No. 33

イタコと電話占いの関係

イタコと電話占い

恐山のイタコをご存知でしょうか。イタコとは、霊界に通じ、死者の霊を自由自在に呼び寄せ、その身に降ろして声を聞くことが出来る霊媒師の総称です。近年、このイタコと電話占い業界が急速に距離を縮めつつあります。これにはいくつかの理由があるようです。古めかしく伝統あるイタコと、比較的新しい業態である電話占い。この二者には一体どんな関係があるのでしょうか。

イタコの高齢化

イタコの多くは視力に問題を抱える女性。昔の日本における農村部ではこういった女性は大変弱い存在であり、一般的な方法で社会参加をすることが実質的に不可能でした。そんな女性が社会参加するための数少ない方法、それが霊能力を磨き上げ“巫女”となることだったのです。イタコとはハンディキャップを抱える方が社会参加するためのエクスキューズだったと言えます。

ですが現代社会では、そういったハンディキャップを抱える方が暮らしていくための様々な制度が設けられています。イタコになる以外にも様々な道が用意されているのです。わざわざ厳しい修行を経てイタコになろうとする女性は減少の一途を辿っており、現在活躍しているイタコはほぼ全員が高齢者ばかり。イタコは恐山で祭りが開かれる時期にこぞって“イタコマチ”と呼ばれる鑑定スペースを開き、そこで鑑定を行いますが、高齢のイタコの中には、「恐山まで足を運ぶ体力がない」という理由で引退を選ぶ方も少なくありません。そういった方が電話占い師として再デビューを果たす流れがあります。

社会の仕組みの変化

かつての日本には、小さな村がそこかしこに点在しており、そういった村のいくつかにはまじない師や霊媒師がおりました。“陰陽師”や“ユタ”などはその最たるものとして有名です。ですが科学文明が発達していくにつれ、そういった存在は「まやかし」として扱われ、社会から徐々にその姿を消していきました。

それに取って代わったのが占い師や霊能者です。駅前に小さな鑑定スペースを構える手相占い師、商店街の片隅にある占いの館などは、かつての日本にいたまじない師や霊媒師に似た役割を担っていると言えるでしょう。ですがそういった形の文化すらも、ネットが発達した昨今、少しずつ古いものとして扱われつつあります。

現代人が必要とするのは「家にいながら鑑定できる占い」であると言えます。それを察した一部のイタコは恐山での鑑定を続ける傍ら「電話占いによる鑑定サービス」を開始しました。イタコの電話占いは現在確認できる範囲で数社ほど存在しています。これは現代社会の仕組みに呼応した必然の風潮なのかも知れません。


またその他にも、イタコを師と仰ぎ、イタコの元で修行を行った霊能者が“イタコ流”の霊能力を使って電話占い鑑定を行っていることもあるようです。もともと民衆の間から自然に生まれたイタコが、こういった形で現代社会に溶け込んでいるのは、理に敵った流れであると言えるでしょう。

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